exhibition

これからの予定一覧



是恒さくら+Dylan Thomas
ふたつの水が出会うとき / When two waters meet

盛岡市・ビクトリア市姉妹都市提携35周年記念事業


Cyg art galleryの近くを流れる中津川にかかる橋の上では、毎年秋になると多くの人が鮭の姿を探して足を止めます。遠く海の向こうのビクトリア市にも鮭が帰る川が流れ、古くから人々の生活に欠かせない存在となっているそうです。
この展覧会では盛岡市・ビクトリア市姉妹都市提携35周年記念事業として、2つの土地に共通する「鮭」の存在に注目し、「鮭と人の暮らしとアート」をテーマに是恒さくらとDylan Thomas2人の作家の作品をご紹介いたします。
是恒さくらは各地に残る鮭の話を聞き集め、それらの話や取材の旅の中で目にした様子をもとに作品を制作。その様子は集めた糸を組み合わせより分けながら布を織り上げるようでもあります。
Dylan Thomas はカナダの先住民であるコーストサリッシュのアーティストで、伝統的なモチーフや技法を引き継ぎながら、新しい伝統芸術を発表しています。
残念ながら、今回はDylanの来日は叶いませんでしたが、2人の作家が描く鮭の姿を通して、遠く離れた土地の物語に思いを馳せていただければと思います。

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「ふたつの水が出会うとき / When two waters meet」

盛岡市の中心部を流れる中津川では、秋になると橋の上から川をのぞきこむ人たちを見かける。長い旅から故郷の川へ戻って来た鮭を、誰もが愛おしそう見つめている。
東北各地に「鮭のオオスケ」にまつわる伝承がある。毎年秋の決まった日に、鮭のオオスケと呼ばれる大きな鮭が叫び声をあげながら、眷族をひきつれ川を上ってくる。その叫び声を聞いた者は命を落とす。だからこの日より前は漁を行わない、という類のものだ。鮭のオオスケは、鮭の王とも、鮭の妖怪ともいわれる。
岩手県内では、大鷲にさらわれた人が鮭のオオスケに助けられ故郷に帰って来たという話(旧竹駒村/現・岩手県陸前高田市)や、遠野が湖水であった頃、気仙口から鮭に乗ってやってきた男が遠野郷に住み着いた人間の始まりであったという話がある。人の世界と鮭の世界が交わる語りは北海道や北米にもあり、環太平洋に広がっているようだ。
毎年同じ川に戻ってくる鮭は、流域に留まり暮らす人々にとって、想像の彼方の遠い世界との間を行き来する不思議な存在でもあっただろう。時代は変わり、世界は小さく、遠くは近くになりつつあった。しかし2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、日本から国外へ旅することも、海外から日本を訪れることも難しくなった。
けれど鮭たちは、きっと変わらず同じ川に戻って来るだろう。北太平洋のアラスカ・カナダの海岸まで回遊する10,000キロメートルの旅を終えて、日本の私たちにとって身近な川に、鮭は戻って来る。その昔、人々がはるか彼方へ旅する鮭にさまざまな物語を託したように、想像の力を鮭の姿にのせて、いまここから旅ができるかもしれない。
今回、盛岡で発表されるDylan Thomasの作品は、太平洋のむこう側にも鮭とともにある暮らしや文化があることを教えてくれる。是恒さくらは、日本国内では忘れられつつある鮭の伝承へのリサーチから、変身譚に着目する。「鮭に姿を変える人とその衣装」を、想像の世界への案内人として創作する。
鮭に導かれたふたつの世界が出会う時、私たちはどれほど遠くまでゆけるだろう。

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《鮭を纏う 2020年、秋》

日本の東北地方から北海道、そしてアラスカやカナダの北米各地で、人の世界と魚の世界が交わる物語が伝えられている。
鮭が人の姿をして現れたこともあれば、川に落ちた人が魚となって海へ下り、魚の世界で暮らしたこともある。
北方の先住民の間では、あらゆる生き物は同じ魂を持ち、着ているものだけが違うと考えられているそうだ。
動物はそれぞれ違う毛並みの毛皮を纏い、人は動物から得た毛皮や衣を纏う。
その世界では、人がアザラシやクジラやトナカイをとらえて食べる狩猟の営みも、一連の魂の中のできごとだ。

同じひとつの魂を持って、人が鮭の衣を纏うとしたら。
そのとき人は鮭とともに遠い海へと旅するだろうか。

この秋も同じ川に戻ってくる鮭たちが辿った旅路、水平線の向こうの世界を想像しながら、
物語を紡いだ糸とその端切れを着物に仕立ててみる。

人が、鮭を纏う。そんな着物をつくるなら、どんな意匠だろう。
鮭を纏う、そのとき人は、どんな世界を見るのだろう。

展覧会に寄せて 是恒さくら



日時 2020年10月31日(土)-11月15日(日)
11:00-19:00/火曜・水曜定休
※1度に8名までの入場制限
会場 Cyg art gallery
入場 無料
作家プロフィール 是恒さくら(これつね さくら)
美術家。1986年広島県生まれ。宮城県在住。2010年アラスカ大学フェアバンクス校卒業。2017年東北芸術工科大学大学院修士課程地域デザイン研究領域修了。アラスカや東北各地の捕鯨、漁労、海の民俗文化についてフィールドワークと採話を行い、リトルプレスや刺繍、造形作品として発表。 2016年より、リトルプレス『ありふれたくじら』を発行(Vol.1~6既刊)。 グループ展、個展など多数開催。



Dylan Thomas(ディラン トーマス)
1986年ビクトリア市生まれ。カナダ西海岸の先住民族の1つであるコーストサリッシュのアーティスト。幼い頃から自らの部族の伝統や文化に触れる環境で育った。コーストサリッシュのジュエリーアーティスト、セレッツェの下でジュエリーを、クワキウトル族アーティスト、ランデクックの下で全ての伝統的な装飾技法を習得。2019年ビクトリア市の先住民アーティストインレジデンスに選ばれる。グループ展、個展など多数開催。

盛岡市・ビクトリア市姉妹都市提携について
盛岡市で生まれ育ち国際連盟事務次長を務めた新渡戸稲造博士が,カナダのバンフで行われた太平洋問題調査会議に出席後ビクトリア市にある「ロイヤル・ジュビリー病院」で亡くなりました。新渡戸博士の生誕の地と終焉の地という縁がきっかけで,1985 年5月23 日(カナダ時間)に姉妹都市を提携しました。
中津川下流の下の橋近くに新渡戸稲造生誕の地があり、Cygからの道中には盛岡市とビクトリア市の姉妹都市提携十周年を記念して寄贈されたトーテムポールがあります。トーテムポールにも鮭の姿がありますので、ぜひ探してみてください。
感染症への
対策対応について
お客様へのお願い
1.体調に変化を感じられている方はご来場をお控えいただくようお願いいたします。
2.ご来場の際は、マスクの着用・手指の消毒または手洗いのご協力をお願いいたします。
3.お客様同士の間隔が1m以上となるよう、距離を保ってご鑑賞いただくようお願いいたします。

ギャラリー内における感染予防対策
手指消毒液の設置、全スタッフのマスク着用 、店内の定期的な換気・消毒、入場制限(会場内の人数が一定数を超える場合)

感染症への対策対応についてはこちらを随時更新しております。

以下のような混雑時はご入場をお待ちいただくことがございます。
・Cyg ギャラリー内の人数が8名以上になる場合
・Cyg /Toast 併せて人数が12名以上になる場合
・そのほか、スタッフが必要と判断した場合